弥山凌ハーフロックタイム

〜凌の気ままな日常〜

ウイスキーをハーフロックで グラスにウイスキーと水を半々に注ぐ 度数も下がって程よく酔っ払う そんな気分で… いくつになっても夢追い人、演者 弥山凌(ミヤマリョウ)の、取り止めもない、よもやま話を今夜も聞いてもらいましょう。

約束の場所へ行く。『K・陽子』vol.12

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Episode 082

 

不定期恋愛小説 『K・陽子』vol.12

 

「陽子に恋してるんだ。元々客で来たわけじゃないから。何であんなに簡単に付き合い始めたのか。週に一回は、会ってる。でも、まだ何もやってないんだ。信じられるか」
「やらない方がいいですよ」
「何で、オマエ陽子のこと嫌いか」
「またすぐに冷めますよ。前のMさんの時だって。Sさんと別れるみたいに言ってたでしょう」
「うん。そうだったな。オレ、冷めやすいからなぁ。Mも結婚するらしい。皆オレの前からいなくなってしまう。卒業して行くんだ」
「いいんでしょう、それで。気持ちが続かないんだから」

今までの付き合いと陽子との関係は、違うと思った。石井の言うことも、もちろん当たっている。僕の歴史をずっとそばで見てきた男だから、僕の恋愛パターンは、僕以上に精通している。いつも理想を夢見て恋愛を始める。居心地の良さに相手もその気になる。やがて、僕は理想と現実のギャップに気がつく。そして、自らの手で、恋愛のページを破り捨てる。相手のことは、御構い無しだ。ワガママを絵に描いたようなセルフィッシュ・ジ・エンド。幕切れは、いとも簡単。そして、振り出しに戻る。

陽子とパリで会う約束は、きっと実行する。陽子が来ても来なくても、約束の場所へ行くつもりだ。与えられた運命に従うだけだ。しかし、それもおかしな話だ。現実から逃避している。僕には、現在妻Sがいる。別れているのか、その頃には。多分。いつも多分なんだ。自分の中で全ての計画が、多分でしかない。明日のことも、一週間先のことも、1ヶ月先のことも、一年先のことも。僕は、ずっとそうやって生きてきた。僕の未来に確実性はない。確実なものは、目の前の相手と恋を語る行為。僕が手にできる唯一の現実。

✳この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。