弥山凌ハーフロックタイム

〜凌の気ままな日常〜

ウイスキーをハーフロックで グラスにウイスキーと水を半々に注ぐ 度数も下がって程よく酔っ払う そんな気分で… いくつになっても夢追い人、演者 弥山凌(ミヤマリョウ)の、取り止めもない、よもやま話を今夜も聞いてもらいましょう。

凱旋門で夕方6時に。『K・陽子』vol.6

イメージ pixabay


Episode  048

Episode39から始まった過去への旅は、記憶を辿りながら、脳内に残ってるであろう様々なエピソードを掘り起こして、文章を紡ぐ作業で、思った以上に精神も肉体も疲労困憊した

仕事が終わって家に帰り着くのは、早くて日が変わる前、今日も入り口の扉を開けたのは、25時を回っていた

8月18日から始めた執筆行為は、
僕の睡眠時間を減少させた
9月1日からは、読書もプラスして
早い時で3時半に就寝、遅い時は、5時過ぎに就寝する日々が続いている

行なのだ、修行行為なのだ。
自らを追い込んでいく毎日、サディスティックでたまらないね、笑笑

今日は、休憩を頂いて

読者の方々期待値ゼロの恋愛小説をご覧になってください♪ 笑笑


不定期恋愛小説 『K・陽子』vol.6


八幡市石清水八幡宮

風の強い日だった。
しばらく日本にいなかった陽子から電話があって、石清水八幡宮に行くことになった。三条京阪で待ち合わせて、八幡市駅に向かった。

大学生の頃、枚方から京都まで通った。その頃は、八幡町駅だったが、駅から山頂に登るケーブルがどんなものか興味があった。山頂まで登る日が来るのを、何度か想像した事があった。

ケーブルで山頂まで上がり、神社を一周して山道を歩いている時、風が心地よく頬を撫でた。その風の勢いに心を動かされたのか、僕は彼女を抱きしめた。たまらなく愛おしくなって、たまらなく彼女が欲しかった。衝動的な僕の行動を、陽子は咎めなかった。ほんの数分間の抱擁だった。

英国で撮った写真を見せられたが、僕の中に何の感情も生まれず、感想めいたものを言葉に表すことが出来なかった。
陽子だけが存在する世界、僕にはまぶしかった。
「ねえ、いつか二人で旅をしたい。英国には、綺麗なお城がたくさんあるの。でも、陽子、ロンドンは嫌い。石を投げられたことがあるんだ。日本人って言うだけで嫌がらせをするの」
「イギリスは、オレに似合わない気がするんだ。なんて言うのか。時代の先を行き過ぎている。付き合えない。まあ城は悪くないけど。それよりフランス、オレの夢って言うか」
「フランス、パリ⁇」
「オレとフランスって、何かしら縁があるんだ。ジュリアンソレルの話は、前にしたよね。フランスの片田舎ヴェリエールの出身。マリーアントワネットと僕の誕生日は、同じ日だし、萩原朔太郎の詩が高校の現代国語の教科書に載っていて、いまだにその詩を暗記している。『ふらんすへ行きたしと思へども』で始まる詩なんだけど…
高校の時、オレは、自分の人生をその詩に投影して未来のストーリーを考えた。『ふらんす』イコール非凡なる人生。大人になったオレは、非凡に生きようとする。でも、それが出来ないまま人生を終える。何もせずに何も見ずにただ与えられた時間、空間の中で人生を全うする。ありふれた出会いの中で喜びを感じ、別れも経験して悲しみも感じる。とても気の利いた神様が与えてくれたおきまりの人生を過ごす。それでも、きっと幸せなんだ。自分の人生に満足してるんだ。夢を見るだけで生きてゆけるんだ。それが叶おうと叶うまいと大したことじゃない。あの頃は、そういう風に未来を捉えていた…
ゴメン、おかしいよね」
「おかしい、本当におかしい。一の瀬さんって、普通じゃないよね。そこが好きなんだけど。ねえ、陽子の夢を叶えてくれる。一緒に行こうよ。フランス。今は、無理でしょ。だったら、一の瀬さんの50歳の誕生日の日に凱旋門で待ってる。ねえ、何時にする。夕方の6時がいい。約束して!」
「うん、多分大丈夫」

何故マリーアントワネットと同じ日に生まれたのか。何故萩原朔太郎の詩に心を動かされたのか。何故ジュリアンソレルを名乗る事にしたのか。何故2006年に陽子とパリで会う約束をしたのか。何故陽子は、僕の前に現れたのか。

はたして僕は、陽子との約束を守りパリへ行くのか?僕は、きっとふらんすへ行く。
陽子の提案も現実とはかなりかけ離れたものだったが、僕自身の考え方もノーマルではなかった。それでも、僕らの関係は、依然曖昧なもので、一緒に分かち合う秘密の時間は、日を重ねるごとに長くなったが、僕たちの間に俗世間的な事件は発生しなかった。陽子の僕に対する気持ちは強くなっても、それを男女の関係にまで持ち込めなかった。


✳この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。